日曜日の午後、母は冷麦(乾麺)を持ってやってきた

母「結婚しないの?」
娘「するよたぶん」
母「結婚できるの?」
娘「できるよたぶん」
母「結婚したいの?」
娘「うーん…」
母「あんたはもう、また適当言ってるだろう」
 
娘「どうしてそんなに結婚を勧めるのさ」
母「そりゃ、心配だからやん」
娘「仕事もしてるし生活もできてるし、ちゃんと生きてるし問題ないじゃん」
母「うーん…」
娘「たぶんひとりでも一生平気だよわたしは」
母「そうじゃなくて…うーん」
 
母「好きなこと、たとえば仕事、たとえば趣味、そういうのが変わるわけじゃないじゃない」
娘「うん?」
母「結婚したらひとりのとき、ふたりのとき、両方できるじゃない」
娘「うーん?」
母「好きなことを理解し合える相手がなんとなく傍にいるのは悪くないじゃない」
娘「ひとりでもいいじゃん」
母「うーん…」
 
母「何かあったとき、無条件に助け合える人が家族になると良いじゃない」
娘「それはいいねえ」
母「うん。そうじゃない人とはうまくいかないけど…」
娘「…」
母「まあ、もうあんたは今までどおりで良いと思うんだけどさ」
娘「うん」
母「言っても聞かないし」
娘「…」
母「でも正直なとこね、親の心配だけじゃなくてさ、結婚っていうそういう仕組みはさ、あんたにとってそんなに悪くないんじゃないかと思うんだよね」
娘「お見合いならしないよ」
母「そういう話じゃなくてさ」
娘「別に結婚ていうこと自体に悪い印象なんかないよ。よくわかんないだけで」
母「わかんないだろそんなもの。お母さんだってようやくわかってきたくらいなんだから」
娘「ふーん、そうなの?」
母「そうだよ」
 
娘「冷麦ありがとう。気をつけてね」
母「うん。あんたもしっかり休みなさいよ」
娘「はいよー」
母「あ、そうだ。弟嫁の出産祝い、なにか考えときなさいよ」
娘「あー!そうだね。やっぱし現金かな」
母「聞いといてあげよか?」
娘「おねがいします」
母「生まれたらすぐ来れるの?」
娘「仕事を蹴ってまでは行けないけど、都合つけてすぐ行くよ」
母「ん。じゃあね」
娘「またね」